俺と『リミットレス』

ハングオーバーシリーズ」や「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」でお馴染み、男も羨む伊達男ブラッドリー・クーパー主演の「リミットレス」をTOHO梅田で見てきたよ。


〜あらすじ〜
スランプに陥り小説が書けなくなってしまった主人公のエディは「もうすぐ世界を変えるような小説を書くんだぜ」なんて息巻いてるけど、昼間からついつい酒に溺れてしまうダメな男。そんな彼に遂に恋人のリンディ(アビー・コーニッシュ)も愛想を尽かし、「私は貴方にとって都合の良いだけの女なの?」と別れを告げられてしまう。「あのまま故郷で家業を継いでりゃよかったのかなぁ…」、と今の人生に迷いはじめた時、元嫁の弟ヴァーノンからとあるドラッグ(NZT-48)を渡される。ドラックの効果で自分の脳力を100%引き出し、自身のやりたい人生が送れるようになったエディはそのドラッグに溺れていくのであった…。



ハングオーバーシリーズでは酔いどれ軍団(ウルフパック)の中でもどちらかといえば冷静なブレーキ役に回っていたブラッドリー・クーパーですが、本作の序盤での彼はハングオーバーシリーズ以上に、リアリティのある(共感できる)ダメ人間だよなぁと思いました。
・頭の中ではダメだと分かってるんだけど、色々考えてるうちに結局ダメな方向(楽なほう)についつい流れてしまう。
・つい勢いで自分の思っている以上の言葉が、口から発せられてしまう。
・今日できることは明日もできるから明日がんばればいいじゃん。
・たまにわれに返って感じる、今俺は何をやっているんだ感。 などなど
「伊達男もきっちりしてるから伊達男なのであって、ぼろぼろだとやっぱりオーラ無いよね」と感じさせるだけの使用前後の落差がありすぎる姿を見て、やっぱいい俳優だなぁと感じたのでした。


(左:使用前 右:使用後)


そんなこんなでNZT-48を飲んで覚醒した彼ですが、その覚醒の描写が面白い。自分の世界の色調がぶわーっと明るくなったり、視界が大幅に広がって今まで見えてこなかったものが見えてきたり、一つ一つの感覚が研ぎ澄まされていく感じが、見てるこちら側にも伝わってくる演出が良かったなぁ。で、脳力が発揮できるようになった彼の完璧超人ぶりなんですが、突拍子も無いスーパーヒーロー的な存在になるのではなくて、今まで培ってきたものをベースにした描かれ方なのもものすごい説得力があってよかったです。
たまに「この人物凄く賢いなぁ」って感じる人がいるじゃないですか、他の人よりも思考のスピードが違ってる人。会話してるときにこっちは”向こうの発言を咀嚼→こちら側の思考タイム→発言”って流れをちまちまやってるのに、相手側の思考が早すぎてこっちがちょっと発言しただけで10倍くらいの発言を返してきて、こちらが理解するまもなく向こうだけで話の内容が完結してしまう人(うちの会社の上司です…)。そういった思考のレベルがまったく違う人の感覚が理解できる(ような気になる)覚醒描写を、ドラックを飲んだ直後のシーンで描いているので、その後の成功っぷりにも物凄く説得力を感じましたね。逆に現実味のある完璧超人ぶりなので、後半ちょっと抜けてる所があっても”そういえば思考力早いあの人でもたまにポカやらかすよね”と好意的に補完できるのかなと思いました。
あと、頭の良さって人それぞれの解釈があると思いますが、本作品で提示されてる「さまざまな知識を有機的に結合させる脳力のある人」っていう考え方も凄くよかったなぁ…。



(できる人は思考が違う)


薬を飲んで覚醒し理想の自分になったぜ!と、金も名声も知恵も手に入れつつあって調子に乗っていた彼ですが、薬の恐るべき副作用が明らかになったり、当然ながら出所怪しい薬なので謎の人物に追われたり、成功を阻もうとする人物が現れたり等などの色々ピンチを迎えるわけですが、その部分もテンポよく消化されてて良かったですね。(特に彼女の大ピンチをどうやって切り抜けるのかってシーンが印象的)
で、そんなこんなであのラストですが個人的には”アリ”だと思いますね。ドラッグによって達成された成功なのかもしれないけれど、本作ではその成功のベースとなった能力はあくまでも本人の自己研鑽によって得られた部分に拠るものが大きいわけで、ドラッグなしでも成功できるって言うのも説得力が無いわけじゃないかなと。(逆にドラッグなしだとボンクラは成功できないっていうことに繋がってしまう…)
だからとってつけたような理由(シナプスがうんたら〜)の方が若干蛇足気味に思えたりしました。


(追いかけてくる怖い人)



とんでもない記憶力とひらめきで大儲けする、何ヶ国語も自由自在に操れる、音楽や芸術方面でも多様な才能を発揮、そんなずば抜けた能力は必要ないのけど、部屋の掃除とブログの更新ぐらいならテキパキできる。そんな薬が開発されたらもしかしたら自分も飲んでみたくなるかもしれない、と変な妄想を抱かせてくれる小気味良い作品でござったよ、オススメ。


(部屋の掃除とブログ更新がテキパキできるレベルの薬で良いよ!)