俺と「X-ミッション」

〜ある雨の日の午後〜

「ヘイ、マイク!久しぶり。」
「どうしたんだいフィル?」
「いやー、久しぶりに映画でも見ようかと思ってるんだけど、最近見た映画でインパクトの強い作品ってある?」
「あるにはあるけど…な…」
「じゃあその作品教えてよ」
「…。よし分かった!まずは言っておきたいことがある。この作品、そんなに面白くないから!」
「いや、できれば面白い作品のほうが…」
「ちょっと待て!君が言ったのはインパクトの強い作品だろ。この作品、インパクトだけは最強だから!」
「とりあえず話を聞いてから考えて見よう。ところでそんなインパクトのある作品って何なんだい?」
「そりゃもちろん『X-ミッション』さ!!」
「あー、テレビとかで何回かCM見たなー。確かにインパクトのありそうなアクションシーンが流れてたなー」
「いや、この映画がインパクトあるのはそこじゃないから」
「えっ??」


「いやいや、どう考えてもアクションメインの作品でしょう。じゃあ何がインパクトあるっていうんだいマイク?」
「それがオザキ8さ!!」
「…そ、そのオザキ8と言うのは一体何なんだ?」
「一言で言うと概念かな…」
「いや、全く意味分からないよ。マイク…」
「具体的にいうと、自然への感謝を表してるんだよ」
「ああ、それならちょっと分かる気がするな」
「ちなみにこのオザキ8を信奉する敵役たちは山に登る途中でゴミを拾ったり」
「あー地球を大切にってことな」
「山の頂上から飛び降りたり」
「なるほ、…え?」
「でもって、鉱山を爆破したりするんだよ!」
「いや、それむしろ自然を破壊してないか?」
「あと、活動資金集めるために銀行強盗したり、パーティしたりもする」
「いや、自然への感謝どこ行ったよ!!!」

「まあ、そこら辺の細かいことは置いといて、ようは『自然への感謝を表すために困難なことに挑む』これがオザキ8ってことだよ」
「まあ、そういうことにしておこう。しかし、コレが何でインパクトあるのか良く分からないんだが…」
「考えて見ろよフィル。この概念を遣えば多くの映画の出来事が説明できるんだよ!」
「全く理解できないんだが」
「例えば、『オデッセイ』な」
「あー、あの映画のマット・デイモン凄かったよな。あんな状況になったら俺はすぐ死んでると思うよ」
「何故、あの映画で彼があんな過酷な状況に耐えれたのか分かるか?」
「そりゃ、何としても地球に帰りたかったからじゃ…。まさか…」
「そう、彼は火星の過酷な状況に挑むことで火星への感謝を表してたんだよ!あれこそオザキ8の体現だ!!」
「…(絶対無い)」
「つまり、オザキ8と言う概念を使えば『オデッセイ』も『マット・デイモンが火星でオザキ8に挑戦する映画』になる訳だよ!」
「…(これはヤバイな、完全にイッちゃってる)」
「他にもサンドラ・ブロックが宇宙でオザキ8に挑んだりしてるし、様々な映画でオザキ8の影響を垣間見ることはできるんだよ」
「…(こっ、こじつけなんじゃ)」
「他の映画にも影響を与えるオザキ8という概念。こんなインパクトのあるモノは滅多にお目にかかれないよ思うよ!」
「…もう、分かったよ。とりあえずオザキ…じゃなかった『X-ミッション』借りてみるよ」
「念を押しておくけど、映画としてはそこまで面白くないからね。」


〜時は流れて〜

「フィル、久しぶりだね」
「やあ、マイク。こないだ言われた『X-ミッション』見たよ!確かにマイクの言うとおりだったよ!」
「良かった。オザキ8の凄さを君も理解してくれてうれしいよ!」
「そうなんだ。その後『さざなみ』っていう映画を見たんだけど、確かにこの映画にもオザキ8が感じられたよ!」
「へー、ちょっと知らないけどどんな映画なんだい?アクション映画?」
「いや、結婚45周年のパーティを目前に控えたある老夫婦のもとに一通の手紙が届いて、夫婦関係が徐々にギクシャクしていく物語なんだけどね」
「へー、なんか静かな物語っぽいね」
「そうなんだよ。ただ、その一通の手紙って言うのが、氷山が溶けて旦那の元彼女の死体が見つかったていう内容なんだよ」
「…(おかしい、オザキ8を感じそうな要素が全然無いぞ!)」
「つまり夫婦関係がギクシャクし始めたのは手紙のせい→死体が見つかったのは温暖化のせい→温暖化しなければこんなことにはならなかった→地球への感謝が足りない→オザキ8をすべきだった!、こういう論法が成り立つわけだよ!」
「…(こいつは俺よりも数段危険な、まさにオザキ8原理主義者じゃないか!)」
「いやー、確かにどんな映画にもオザキ8は存在するねー。ホント凄い映画だよ!」
「そ、そうだね…」
「いや、むしろオザキ8が存在するのは映画だけじゃなくて、我々の人生にも一人一人のオザキ8が存在するかもしれない…。よし、マイクこれからは僕たちのオザキ8を探して行こうじゃないか!」
「なんか色々スマンカッタ…」