俺と「守護教師」

残暑が厳しいある夏の昼下がり…。

 

「やあ、マイク。相変わらず暑いね。」

「久しぶりだねフィル。僕に用ということはまた映画の件かな。」

「察しが良いね。最近、韓国映画にハマってね。で、ある俳優の主演作品を見に行こうか迷ってて、君に相談しようかと思ってさ。」

「ほう。で、その俳優とは?」

「マ・ドンソクさ。」

「あの、一見するとその筋の人としか思えないような強面の顔面力とプロレスラーと言っても通じるような太すぎる二の腕がきらめく良すぎるガタイからは想像もつかないようなコミカルな役柄も非常によく似合う愛称マブリーことマ・ドンソクか…」

 

 

 

「おっ、おう。まるでマ・ドンソクを知らない人にするような流麗な解説ありがとうございます。で、彼の主演作『守護教師』これを見ようかどうか迷ってるんだよね。熱血教師役のマ・ドンソクなんてワクワクするじゃないか!」

「”守護教師”か…。一応見たけどね…。」

「ウン?何か含みを持たせるような感じだけど、彼に似合ってない役柄なのかい?」

「いや、本作のマ・ドンソクは、曲がったこーとが大嫌いはーら…大嫌いなキャラで、イメージにぴったりなキャラではあるんだよな。」

「おお、それならマ・ドンソク好きには十分楽しめそうじゃないか。そんな彼が熱血教師として活躍するわけだろ。」

「いや、彼はボクシングの元チャンピオンでコーチとしても活躍してたけど、偉い人と揉めたせいでコーチを辞めて田舎の女子高に転任してきた教師なんだよ。」

「え?でも、マブリーの熱血指導をうざがっていた女子高生たちも、やがて彼に心を開いて部活で全国大会に出場したりするんじゃないの?」

「…(何故スポコン風の展開に…)。いや、そもそもマブリーの学校での役割は学生指導だから。」

「ということは、毎朝校門前で制服の乱れを指摘して生徒からウザがられたり、下校途中の生徒が買い食いやゲーセンで遊んでないかを取り締まるわけか!なんだ、ソレなら十分アリだな!」

「いや、マブリーの仕事は授業料滞納してる生徒から授業料を徴収することだから…。あと、後者はマブリーの方がやってるけどな!」

「(俺が期待したマブリーの教師要素が)無いじゃん!」

 

 

 「とまあ、ここまでの説明で分かる通りどちらかというと俺たちが期待するマ・ドンソクのマブリー要素は薄めの作品になってる訳だ。」

「じゃあどんな映画になってるんだい。」

「一言でいうと誰も助けてくれない系のサスペンス映画だね。」

「誰も助けてくれない系とは?」

「本作のように、怪しい事件が起きて手がかりもあるのに警察は動いてくれず、そんな中でさらに手がかりを握るキャラが悪の組織(ヤクザ)とかに襲われたりして、主人公以外は誰も助けてくれない…という感じの作品だよ。」

「ということは、ヤクザVS見た目はヤクザと間違われそうなマ・ドンソクというシンプルな展開になるのか、これは期待できる!」

「と思わせておいて、さらに謎の犯人的な人物も絡んだりして、一筋縄にはいかない展開になっているのさ。」

「そうなのか。まあ、韓国サスペンスだからそこら辺も期待できるんだよね!」

「いや、むしろ複雑にしすぎたせいで、ウン?と思う展開になってる部分があったり、かなりダークな雰囲気なお話になってたりして、個人的にはシンプルに素材(マブリー)の魅力が楽しめる作品になってほしかったな…」

「あんなどう料理しても旨くなりそうな立派な素材なのに…、余計な味付けで台無しになってるのか…」

「とはいえ、これはあくまで私の主観だから、もしかしたらフィル的にはどストライクな内容で、しゅ…守護い…という私が映画を見る前に用意してた感想を言ってくれるかもしれないから、自分の目で確かめるのが大事だよ!」

「わかったよマイク。とりあえず時間を見つけて見てくるよ…」

 

 

~時は流れて~

 

「やあ、フィル。あれから結局『守護教師』は見てきたのかい?」

「マイク…。ラストの、ラストの強引さが…しゅ…守護かった…。」