俺と2012年11月の会社での1コマ

(このお話はフィクションです)
2012年11月某日。会社の中での会話。

偉い人「rino君。こないだ出してもらった書類なんだけど、アレの内容をちょっと説明してもらえるかね。」
私「あー、アレですね。ちょっと噛み砕いて説明するために、私の好きなモノを例にして説明しますね。」

仮に今の仕事を、私が初対面の偉い人さんに映画を紹介するものだとして考えて下さい。それで偉い人さんが私に、「rino君、オススメの映画ってある?」って映画について聞いてきたとします。
この時に、「イヤー、スペイン産のゾンビ?映画で『REC3』ってあるんですけど、これマジ面白いっスよー!!」なんて薦めたとして、モチロン100人に1人、いや…1000人1人ぐらいは、「おっ?それって面白そうじゃん。」って反応してくれるかもしれませんが、基本的に「うん、機会があったら見てみるわ…(…何イキナリゾンビ映画とか紹介してくるの?こいつに質問した俺が馬鹿だったな…)。」ってことになって、多分二度と映画のことを話す機会は無いと思いますね。更に、何かの手違いで偉い人さんが『REC3』見ちゃって、「おい、rinoの野郎。ブッ殺してやる!!」って展開になる可能性もありえなくない訳ですよ!

なんでこんな悲劇が起こってしまったかと言えば、これは私が偉い人さんの見たいもの(ニーズ)を無視して、一方的に自分の好きなもの(シーズ)を押し付けてるからですよね。

じゃあ、どうすればいいの?ってなる訳です。そりゃやっぱり物事には順序というものがあるわけで、イキナリゾンビ映画を薦めるよりは、イギリス紳士が初対面の相手と天気の話をするように、「最近どんな映画見ました?」「面白かった映画って何ですか?」「好きな俳優、女優なんてありますか?」などなどの。ありふれた会話からスタートするのがいいと思いますね。
そんな何気ない会話の中から「この人がどんな人なのかな?」って言うのが見えてきてはじめて、ある程度「この人にどんな映画を薦めればいいんだろ?」っていうスタートラインに立てるんじゃないでしょうか。



ごくありふれた映画トークの中から偉い人さんが面白いと感じそうな映画について、自分の知識を総動員するわけですよ。そして頭の中の映画コレクションの中からコレだ!っていう作品が見つかるわけです。そんな作品を薦めるに当って、「いやー、『REC3』って映画が面白くてオススメですよ」と何処にでもありそうな薦め方して、「今度、機会があったら見てみるわ…(5分後ぐらいには忘れそうなタイトルだな)」って展開になり結局見てもらえない可能性も大いに考えられるわけです。そんな展開になったら、偉い人さんがその映画見た後で「イヤーあの映画のあのシーンが良かったですよね」といった話題で盛り上がろうと思っていた私としては大ショック!明日から会社に来れない...。という最悪の結末も無きにしも非ず。

そんな悲しい結末を防ぐためにも…、というかやっぱり自分が自信を持って薦めた作品なら相手に見てもらって、お互いの感想を聞きたくなる訳じゃないですか。そんな明るい結末を迎えるためにも、その作品のよさが伝わるような薦め方をするのも、どんな作品を選ぶのかと同じぐらい大事なことだと思うんですよね。

そして、こっからが薦める側の腕の見せ所になるわけですよ!
例えば、人はやっぱり自分の想像を超えた何かっていうものに惹かれたりするわけで、そういった部分を相手に想像させつつ薦めるのも一つの手だと思いますね。
 「実はコレ、世界初のタイヤ殺人ムービーなんですよ!殺人タイヤが人間を襲うって設定の時点で、訳が分からなくてしょうがないと思いますが、そんな我々の想像を超えた内容が、この映画の中で繰り広げられちゃうんです!」

他にはやっぱり有名監督や新進気鋭な女優さんの名前が出されたりすると、どんな映画か気になっちゃう人も多いはず!
 「この映画、あの『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』で有名な巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督がエドガー・アラン・ポーにまつわるゴシック・ミステリーを作ったんですよ。んで、鍵となるキャラクターの少女役にエル・ファニングが起用されてるんですけど、このエルたんの可愛いことといったらもうね…」

とまあ、色々小細工を弄した説明方法を考えましたが、私が言いたいのは「その映画が物凄く面白い!」って感じてるのが伝われば、相手も十分興味を持ってくれるんじゃないかな!という事ですね。



遂にお勧めした映画を偉い人さんに見てもらって「いやー、この映画面白い!」ってなった時に、偉い人さんに生まれる感情が私への信頼感ですね。そんな信頼感があれば次からは「アイツの薦める映画は面白い!」って事になって、上のようなややこしいプロセスが簡略化されるメリットが生まれるんですよね。


私「とまあ、実は、大好きな映画を薦めることも、(そんなに大好きじゃない)普段の仕事も、別に特別でもなんでもない信頼感の積み重ねが大事だよなーって事が言いたかった訳です。」
偉い人「まあ、こないだの書類からは、映画をお勧めする時ほどの愛情は伝わって来なかったけどな!」
私「ですよねー!!」