俺と「哀しき獣」

梅田ブルク7で哀しき獣(原題:黄海)を見てきたよ。いきなり20世紀FOXのテーマとロゴが出てきたりして、いつもの韓国映画とは違うのかと身構えてしまいましたが、いつもどおりの韓国映画特有の濃いキャラクター(主におっさん)と濃い暴力描写を十二分に堪能できました。
ただ、若干ストーリーの展開が速すぎて自分にとって理解できなかった部分もあるので、その整理がてら自分にとっての備忘録みたいなのを書き起こしてみます。
(当然ながら120%核心に触れるネタバレなので、映画未見の人は映画見てから読んだ方がいいと思います。)



登場人物

・グナム(ハ・ジョンウ)
この映画の主人公で朝鮮族中国東北部に住む朝鮮系の人々)。職業はタクシーの運転手だが、博打(麻雀)と嫁の出稼ぎ資金で借金をこさえて、色々あって韓国で請負殺人をすることに…。始めはヘタレだが、徐々にふっきれて肝が据わっていく様子がこの映画の見所の一つ。妻が韓国に出稼ぎ(朝鮮族の生計を立てる方法として韓国への出稼ぎはメジャーらしい)に出ているが最近は音信不通で、妻の様子を知りたいという気持ちもあって請負殺人を決意する。
チェイサーに続いて今回も追われる人を演じてしまうことになった人でもある。



・ミョン・チョナ(キム・ユンソク)
この映画のもう一人の主人公(だと私が勝手に思っている)。主人公が住む延吉(中国東北部の街)の裏社会の顔役で、主人公を韓国に送り込んだ張本人。呼称は社長だが、どう見ても山賊の親分といった方がしっくり来る容貌と行動である。(以下、親分)本作の暴力描写の7割程度を一手に引き受け、歯向かう者たちを圧倒的な実力でねじ伏せていく。(得意武器は手斧と骨)多分、核戦争後の暴力が支配する世界とかでも平気で生き残ることができる、そんな人種。
チェイサーではハ・ジョンウを追いかける側だったけど、本作でもその関係は変わっていなかったりする。



・キム・テウォン(チョ・ソンハ)
この映画のもう一人の社長(以下、社長)。表向きは社長だしその風貌も社長っぽいが、この人もヤのつく自由業的なお仕事に携わってます。主人公が殺人を請負った相手にヒットマンを送り込んでたため、その現場を見られた主人公の身柄を確保しようとしてアレコレ頑張るが、全てが裏目に出る哀しい人。



・刑事(チョン・マンシク)
グナムの起こした(とされる)殺人事件を追う刑事。『息もできない」『生き残るための三つの取引』で強烈なほっこり兄さんっぷりを発揮していたチョン・マンシクが演じているが、デキル刑事役のためほっこり成分は薄い、というか皆無。ついでに出番もそんなに多くない…(後半はフェイドアウト)。


キム・スヒョン教授
韓国柔道界の英雄(かどうかしらんけど、そういうことにしておこう)でオリンピックの銀メダリストの大学教授。だが、その実コイツも大人のマッサージ店を経営していたりして、どう見てもヤクザです。本当にありがとうございました。主人公が殺人を依頼された相手。


・主人公の嫁…韓国に出稼ぎに出るが音信不通に…。
・主人公の娘…母親が出稼ぎに出たため、祖母と一緒に暮らしてる。
・主人公の母…嫁が音信不通なので主人公には嫁のことはあきらめんさいと諭す。
・鮮魚卸のおっさん…嫁の現状を知っている相手。
・教授の嫁…主人公が教授殺しの現場に居る所を見ちゃった人。
・教授の運転手…階段にキン肉バスターをかけられて死亡。
・二人組…主人公以外に教授殺しをしようとしてた人。でも柔道銀メダルの教授に余裕で返り討ちにあう…。
・社長の手下…社長っぽい方の社長の手下。やることなすこと裏目で全てにおいてかわいそうな人。

とまあ登場人物はこんな感じです。では私がストーリー上で引っかかったことを整理していきましょう。




・結局、誰が教授殺しを依頼してた?


教授を殺しにかかってたのは二人組+運転手と、主人公の二組がいました。このうち二人組は社長が依頼してたので確定ですね。
後半の主人公の行動から逆算していくと、


1.教授嫁に教授の経営するビルの場所を聞く
2.ビルの一番偉い奴に運転手の家を聞く
3.運転手の家にあった米袋の中から報酬の金と携帯とかを発見
4.手がかりから社長の手下の所にたどり着く
5.社長「あの野郎俺の愛人に手ぇ出しやがって!だからぶっころしてやった!」


この流れで社長にたどり着けると思います。(まあ、殺人報道直後の展開から二人組→社長の流れは直ぐ分かるかもですが…)あと、あの二人組も実は朝鮮族なんじゃないかなぁと思ったり…。(韓国の朝鮮族は裏家業に手を染めていると言うダメな発想)
じゃあ、もう一方(主人公が依頼された側)は誰なんだといえば、コレは後半ある人物の口から全部説明されてますね。


1.あるカップル(教授嫁と銀行員)から夫殺しの依頼を受ける。
2.知り合いの朝鮮族にそういったことを請負う親分が居る
3.親分から主人公に依頼が…。


という訳で教授嫁と銀行員から依頼が回った訳です。さらに言えば港で主人公をハメようとした奴等(東京行きのコンテに入れようとしてた)が銀行員の名刺を持ってたことから、主人公が逃亡者になってビビッた銀行員がその筋に始末を依頼したんじゃないだろうかなと。
まあ、見てるときはこれら全ての情報がぐちゃぐちゃになった状態で見てたけどね!




・ラストシーンに出てた人って誰?


コレは色々考えたけど正直、明確にコレだって言う明確な回答はチョット分からなかったです。
見終わった直後の印象としては、あの女性は教授の嫁なのかなと思ってました。正直、教授の嫁しか女性の登場人物居なかった(愛人とは明らかに顔が違う)し、主人公の嫁は途中で殺されたんじゃ…(というか顔をはっきり覚えていない)。だから、黄海に主人公の亡骸と嫁遺灰が黄海に投げ込まれるラストがタイトルにもかかってくるのかなと…。あと、教授の「お前も朝鮮族か」って言う台詞から、教授の嫁も実は朝鮮族なんじゃないかと思ったり…。だから、韓国の生活に嫌気がさした教授嫁が故郷に去って行くラストなのかなと…。
でも、コレだと結構すっきりしない部分も出てくるんですよね。(そもそもきっかけはあんたなんじゃ…とか、何故一人?なのか…)
じゃあ、やっぱり主人公の嫁なのかなと。確かに死亡確認した奴は王大人並みのいい加減な奴だったし、列車で出て行った嫁が列車で戻ってくるて言う部分にもかかってくるしなぁ…。ただ、やっぱり自分が主人公の嫁の顔をはっきりと認識できていないのが、凄くもやもやしてる部分だったりしてます。






とまあ、個人的には若干のもやもや感が残りますが、それでも特に親分の暴れっぷりや、中盤の逃走劇のシーンだけで十二分に満足できる作品だと思います。
もう一回見たらすっきりするのかなぁ…。でも見るとしても何度も確認したいからDVDとかかなぁ…。