俺と「横道世之介」

 テレビのCMや劇場の予告編を見た感じだと「コレはちょっとスルーかも…」なんて印象を持ってましたが、評判が凄く良かったり、人から物凄くオススメされたりしたので見に行ったら、「何で俺はこの作品をスルーしようとしたのだ…」と、あの頃(というほど前でもないけど)の自分にダメ出しをしたいほどの作品でした。
 鑑賞後もずっと「この作品の自分にとっての魅力って何なのかな」と思ってたんですけども、先日二回目の鑑賞でパッと「私にとってこういう映画だったのか…」と感じた瞬間があったので、この部分についてちょっと書いておきたいと思いますね。

あらすじ
「そういや大学のとき横道世之介っていたよな」「あー、いたかも。なんか変な奴だよね。」


・桜を見ると思い出す。
 映画の話とは全然関係ないんですが、季節はもう春ですね。そして春と言えば当然桜ですよね。人によって思い出すことは様々だと思いますが、私は桜を見るとふと(いつもという訳ではないけど)18歳だった頃の自分を思い出すんですよ。
 高校は卒業したけども第一志望の大学に見事に落ちて、高校生でも大学生でもない宙ぶらりんの生活を送ることが決定してしまった私。「まあ、仲いい友人は大半こんな感じだし大丈夫だろ」なんて、よく分からん理由で自分を宥めながら、ボヤーッと日常を送ってた18歳の3月末。同じく第一志望に落ちた高校の友人Wに誘われて、何故か市民プールに行くことに…(高校時代は帰宅部だったけど、一時期友人Wと一緒にプールに通ってた)。
 多分、この日もテキトーにプールを泳いだり、取るに足らないような話をしながら水中を歩いたりしてたと思う(ここら辺はもう記憶も殆どない…)。そんなプールで過ごした後の気だるい感じの中、三月の晴れた日の暖かな日差しに包まれて、二人で外のベンチに座って見た桜、それも強い風に吹かれて綺麗に散っていく桜。この様子は桜を見ると当時の感覚と一緒になって、突然脳裏に再生されたりする時がたまにあるんですよね。
 相変わらず映画の感想に行くまでの前置きが長いですが、つまり私にとってこの映画は「突然、記憶の奥底に眠ってたあの頃を呼び起こしてくれる瞬間を描いた」そんな映画だって事を言いたかった訳ですよ。


・突如、呼び起こされるあの頃の記憶
 何かがきっかけである瞬間に自分の記憶の中にふっと湧き上がって来る記憶、って言うのがあると思うんですよね。モチロン、それが悲しかったりイヤだった出来事である場合もあるけど、楽しかったり嬉しかったりする記憶だと、よく分からないけど得したなって言う気持ちになるんですよね。そんな良く分からないけど得した気持ちになる部分をかき集めると、こんな素晴しい映画ができるのか…。二度目の鑑賞だとこの部分の素晴しさに、なんか心打たれた気がします。
 誰の人生の中でも横道世之介見たいな人物は居ると思うし、逆に自分も誰かの人生の横道世之介になってるんじゃないかな。そんな映画でしたね。