俺と「2013年の映画パンフレット」

 はい、大晦日の日に大量の映画のパンフレットを実家のコタツにぶちまけては、親から怪訝な表情をされてる私ですが、今年も映画パンフレット愛好家達の期待を一身に受け(ているのかもしれない)、良かったパンフレット、微妙だったパンフレットを発表していきたいと思います。

 まずは、今年の購入したパンフレットの数をパーンと発表しましょう!

・74冊(前年比-6)

 昨年よりも少し数は減ってますが、今年は未体験ゾーンみたいな規模の小さな特集上映を多く見た関係や、クロニクルみたいに映画は面白かったけどパンフレットが作られてなかった作品なんかもあって、ちょっと少ない結果になりました。まあ、それでも70冊を超えてるとか…、実家で親にばれないパンフレットの置き場所をそろそろ考えないとな…。


今年も大量に購入したパンフレット(…の一部)


 さて、去年はベスト10形式で好きなパンフレットを発表していきましたが、今年は1つとんでもなく気合の入ったパンフレットがあったのでそれを最後に発表して、それ以外は特に順位もつけずに思いつくままに発表しちゃいましょう。なお、今年も厳選する際に選んだ基準は、

 1.パンフレットとしての情報量
 2.デザインのカッコよさ

 という、要は全くの個人的な好みです。では、ドンドン良かったパンフレットを発表していきましょう!なお、個人的にグッときた映画のみパンフレットを買っているので、見てない映画のパンフレットやグッと来なかった映画のパンフレットは残念ながら買っていません…。


・まさかの上開き

 ふつうはパンフレットと言えば本や雑誌と同じように横開きになっていて、右から左に、左から右にと読み進めていくわけです。ただ、今年はなんと上開きのパンフレットが登場したんですよ!しかも二つも。それが「ジャンゴ 繋がれざる者」と「ある海辺の詩人〜小さなヴェニスで」の2作品です。


ジャンゴ 繋がれざる者」と「ある海辺の詩人〜小さなヴェニスで」のパンフと比較用の「四十九日のレシピ」のパンフ。



それぞれ表紙を開いてみるとこんな感じになってるのです。


 このうち「ジャンゴ」のパンフレットは、監督や主要キャストのインタビューがあり、タランティーノフィルモグラフィーもあり、時代背景や映画内容を解説したコラムもあり、そしてタランティーノトリビアもありと、非常に充実した内容になっております。縦開きはちょっと読みにくいなんて思ったりしないでもないですが、内容、デザインともに印象に残るパンフレットでした。


「ジャンゴ」のパンフレットはトリビアなんかもいっぱいあって面白いよ!


・タイプライター!

 タイトルだけでも映画を見た人なら「タイピスト!」のパンフレットだなと気付くかもしれませんが、まさにその通り!「タイピスト!」のパンフはホントにタイプライター的なデザインをしてて、これがちょーキュートなデザインなんですよ。もちろん劇中もおフランス映画って感じのセンスのある衣装だったり、小物だったり、美術が出てくるんですが、このパンフにもそんなオシャレなエッセンスがギュっと濃縮されてて素晴らしいです。今年のベストデザインのパンフレットはこの作品!と勝手に決めてしまいましょう!


劇中で主人公が使うタイプライターのデザインをしてて素晴らしい!


タイプライターで打った感じの文章が中に挟み込まれてあって、これがパンフレットの本体になってます。


で、その奥はタイプライターのメカメカしい部分になっていて、タイプライターマニアも納得!(したかも…)


なお、中身は普通の横開きスタイルのパンフレットです。


 ちなみに、「ルビー・スパークス」のパンフレットも裏のデザインはタイプライターになってるんですが、「タイピスト!」のパンフレットと並べてみると、気合の入れ方の違いが分かるんじゃないでしょうか!


左が「ルビー・スパークス」右が「タイピスト!」のパンフレット。


・今年も濃いパンフレット

 「上開きだの、タイプライターだのしゃらくさいこと言ってないで、去年のベストみたいな濃ゆいパンフレットを紹介しろ!」とお嘆きの方がいるかどうかは分かりませんが、エクスペンダブルズシリーズのような濃さを誇るパンフレットが今年もありました。それがスタローンと並ぶアクションスターシュワちゃん主演の「ラストスタンド」のパンフレットです。
 表紙のデザインなんかは全然別モノなんですが、人物紹介やコラムを読み進めていけばいくほどに、だんだんと濃くなっていくエクスペンダブルズ(のパンフレット)臭。ライターとしてどちらも同じ人が登場したり、編集元がどちらも松竹だったりするのも関係あったりするかもしれませんね。とはいえ、やっぱり年に1回はこんな胸焼けしそうな濃いパンフレットを読みたいものです。


表紙を三つ並べてみるとそんなに似てないと感じるかもしれませんが…


中のコラムとかの感じは、エクスペンダブルズ(上)とラストスタンド(下)で同じテイストを感じる…。


・印象に残った記事〜インタビュー編〜

 ここまではざっくりした印象で良かったパンフレットを発表してきましたが、ココからはちょっと具体的な内容で、あのパンフレットのこの記事が良かった!ってのを3つほど紹介したいと思います。まずは1つめのインタビュー編から。
 パンフレットの記事の中でも重要な要素と言えば、監督やキャストへのインタビュー記事ですよね。映画を見ながらあれはこういう事かな〜、なんて思ったりしたことが監督や役者の方から言及されてたりすると凄くガッテン!ってしたくなるし、逆に私が気にしてなかったような内容に意図が隠されてたりするのも、なるほどな〜なんて思ったりするので、毎回楽しみにしてる記事なのですよ。そんなインタビューの中でも一番印象的だったのが「3人のアンヌ」のパンフレットのインタビューですよ。


この表紙のデザインも好き


 この「3人のアンヌ」のインタビュー記事、なんと撮影監督にインタビューしてるんですよ!って「まあ、撮影監督にインタビューなんて珍しいけど、何でそんなことが印象に残るのか?」なんて思われる方も多いと思いますが、この映画を監督してるホン・サンスの作品は、この作品も含めて所々で家庭用ビデオカメラで撮影したような謎のズームが登場するんですよね。この謎ズームについて撮影監督に質問してたりしてて、その内容に興味深々でしたよ。


撮影監督へのインタビューでズームのことが!


・印象に残った記事〜プロダクションノート編〜

 プロダクションノートってなんかかっちょい言い回しを使ってますが、要は撮影に関する様々なエピソードなんかのことです。こういった映画では見えない裏話も、パンフレットの醍醐味的内容ですよね。SF映画とかだと「あのシーンはこういった方法で撮影した!」なんて書かれると「うおー!凄い!」なんて気分になるし、アクション映画だと「役作りのために数か月間のトレーニングを!」なんて書かれても「うおー!凄い!」ってなるし、アクション映画とかで「あのシーンのあんな大爆発が、まさかの実写だったのだ!」なんて書かれても「うおー(略)」という気持ちになるんですよね。そんなプロダクションノートの中で一番印象的な内容が掲載されてたのが「はじまりのみち」のパンフレットです。


表紙は木下恵介役の加瀬亮だけというシンプルなデザインのパンフレット

 この「はじまりのみち」はそれまでアニメ畑の人だった原恵一監督が、初めて実写映画を監督する作品という事もあり、結構インタビューの内容とかでもアニメと実写の差みたいな部分についても触れられたりしてるんですよね。特に、いくつかのシーンはアニメのような絵コンテを書いたなんて発言や、実際に書いた絵コンテがパンフレットに載ってたりしたので、どういうプロセスで映画ってものができていくのかが分かったりしてすごく面白かったですね。
 このパンフレットは価格が600円と安めなのに、それ以外の内容もものすごく充実してるので、今年のパンフレットの中でもかなりのおススメですよ!!


実際に原監督が書いた絵コンテが載ってるのだよ。


・印象に残った記事〜元ネタ解説編〜

 邦画でも自分になじみにのない時代や舞台が設定されてる映画だったりすると、「ココはちょっと分からん…」なんてポイントが出てくる訳ですが、洋画、特にコメディ映画は更にそういった内容が多いと思います。モチロン、パンフレット買っちゃうような映画は、そんな細かいことを気にしなくても爆笑できるような映画だと思うんです。デモ、好きになった映画だったら、細かいネタも楽しみたい気持ちもあるのも事実。そんな欲求に答えてくれるのが、パンフレットに記載されている丁寧な元ネタ解説ですよ!そして、今年私が最もグッときた元ネタ解説が載っているのが、「TED」のパンフレットです。


何だかんだで人気のあるこのクマがパンフレットの表紙

 この「TED」、個人的な印象だと有吉弘行を主演に起用した吹き替えよりも、あまりにもローカライズしすぎた字幕の方が賛否両論あった記憶があったりなかったりしますが、そんな字幕に引っかかる部分があったとしても、このパンフレットにある全4ページのテッド辞典を読めば、まあいいんじゃないかという気持ちになるから不思議(個人の感想です)。例えば、日本語字幕で頑固オヤジ的なニュアンスで登場した星一徹は、原語だとジョン・クロフォードと言ってるらしいですよ!


見てから読めよ!とテッドがおっしゃるテッド辞典。


 いかん、このペースだと年が明けてしまう!という訳で、次はちょっと変わったパンフレットをいくつか、駆け足気味で紹介しましょう。


・ビヨ〜ンと伸びる


先ほど裏のタイプライターを紹介しました「ルビー・スパークス」のパンフレットですが…


広げるとこんな感じに縦にビヨ〜ンと伸びていくのです。以上!


・バッと広がる


なんか嫌な予感がしなくもないですが、この「ハナ 奇跡の46日間」のパンフレットも…


こんな感じでバッと広がるんですよ!!(ピンボケしすぎだ…)


 「ちょっと変わったパンフレットって、この程度なのか…」なんて、奇特にも読んでくれてる皆さんの落胆のため息が聞こえてきそうな気がする…。いや、この二つはあくまで前座。ココからはホントにちょっと変わったパンフレットを紹介しますよ!


・「ももいろそらを」


さて、この「ももいろそらを」のパンフレットですが、プラケースに入っていまして


プラケースの中にはこんな感じでの映画の場面のポストカードが入ってるのです。


そして裏面に映画のあらすじや、解説なんかが載っているというスタイルなんですよ!


・「シュガーマン 奇跡に愛された男」


この「シュガーマン 奇跡に愛された男」のパンフレットは、一見普通のパンフレットのようですが…


実は見えてたのジャケットで、パンフレット本体は中に隠されているというレコードスタイル!(なお、私は当然CD世代です)


裏ジャケもこんな感じのレコードを意識した感じで、映画の雰囲気とベストマッチ!


・「ばしゃ馬さんとビックマウス」

[:60]
最後紹介するのは麻生久美子が脚本家になる夢にしがみつこうとする「ばしゃ馬さんとビックマウス」です。
パンフレットは映画の中で彼女が何度も何度も投降したであろう、封筒の中に入ってるんですよ。


裏側もこんな感じのシールで止められてて、正直開けるのがもったいないですよね…。
というか、自分が不器用&ヘタレなので失敗することを考えると、これはこのままにしておこう…。(ホントに開けてません)


 2013年の一風変わったパンフレットたちはこんな感じでした。では、変わり種パンフレットの次は、今年のパンフレット界隈における私的ニュースを紹介しましょう。


・パンフレット更に保護される

 昨年度は「パンフレットを保護するための紙」が出てきたりして、保護される傾向が出てきたパンフレットですが、今年は更にこの傾向が進み、なんと一部パンフレットは薄いビニールの袋に梱包された形で渡されるようになったんですよね。昨年、「大事なパンフレットを保護しようとする試みが素晴らしい」と絶賛した私ですが、その影響があるのかないのかわかりませんが(ないです!)、パンフレット業界も地味に進歩してるんですよ!


保護されたパンフレットたち。左から「ウルヴァリン SAMURAI」「ゼロ・ダーク・サーティ」「サイドエフェクト」


 そういえば「ももいろそらを」も丁寧にビニールで梱包されたですが、次に紹介するパンフレットはそんなパンフレットの完成形ともいえるパンフレットですよ!


・「もらとりあむタマ子


前田敦子さんが何とも言えないいい味を出してる「もらとりあむタマ子」のパンフレットも、ビニールで大事に保護されてるのです。


で、ビニールから出してみるとタマ子のだるい感じが伝わってきますね。なお、だんごに部分にタイトルが書いてあるのですが、実はアレはビニールの部分を加工してるってのもポイント高し!


パンフの中もこんな感じで映画と同じく見ていてちょう楽しい!このパンフレットも映画が気に入ったらすごくおススメですよ!!


 さて、こんな感じで良かったパンフもあらかた発表し終わったし、あとはちょっと残念だったパンフと、2013の映画パンフレット・オブ・ザ・イヤーを発表して今年を締めくくりましょう!


・あとちょっと頑張れよ!

 ここで、突然ですが問題です。次のうち、映画「ウィ・アンド・アイ」のパンフレットはどちらでしょうか?


カラーの左とモノクロの右。君ならどっちを選ぶ!



正解はモノクロ!(カラーは劇場にあったチラシ)ちなみにチラシにあるバスの走行ルートはパンフにはない…。
200円と価格は良心的だけど、もうちょっと高くても内容を頑張ってくれた方が…。


・強気の価格設定

もう一つ微妙だなと思ったのがイ・ビョンホン主演「王になった男」のパンフレットです。内容は非常にしっかりしてて、キャストの紹介あり、イ・ビョンホンへのインタビューあり、時代背景の解説有りと全く文句はないのです。でも、価格が1,000円と非常に強気な設定でした。正直、1,000円分の価値があるかというと微妙ですね。因みに、普通のパンフレットの値段は大体700円程度なんですよ。(2013年の俺平均)


内容はいいけど、ちょっと高いわ…。


 はい、微妙なパンフレットの事はこの位にして、最後は今年ぶっちぎりで良かったパンフレットを発表して、気持ちよく新年を迎えたいと思います。


・2013パンフレット・オブ・ザ・イヤー


舟を編むです。オメデトウ!!


さて、残りのスペースはこの「舟を編む」のパンフレットがどんなに凄いかを、ひたすら褒め称えるだけの内容になります。ご了承ください。


・ボリュームが凄い!

 このパンフレット、とにかくボリュームが凄いです。今年見た、いや、私が持ってるパンフレットの中でも頭一つ分ぐらい違うボリュームで、それだけでも凄いなと思っちゃうのです。なんせ、全部で128ページもあるんですよ!内容も、いつものインタビュー・プロダクションノートの他に、シナリオが全部収められたりしてて、本当に読みごたえがあります。


サイズは一見普通のパンフ(参考用:「汚れなき祈り」これもなかなか面白い!)と変わらないのですが…



もうね、厚みが全然違うんですね。比較用:右から「団地ともお22巻」「舟を編む」「汚れなき祈り」「バナナ」


・こだわりが凄い!

 この「舟を編む」、松田龍平演じる主人公の馬締光也(マジメミツヤ)が出版社で辞書を作るというのが大きなストーリーなのですが、その辞書作りへのこだわりの一端として、辞書に使う紙にこだわるんですよ。そして、このパンフレットを作ってる方々もそんなマジメ君の拘りにならうように、パンフレットの紙にこだわってるんですよね。
 劇中では「ぬめり感」と呼ばれる、手に吸い付くようなあの辞書の紙の独特感じが強調されるですが、パンフレットの一部でも同じ紙を用いる事で、パンフレットを作る側のこだわりも読んでるこちらに伝わって来るのが素晴らしい!


一見すると普通の紙のような気もしますが…



左下にはこんな注意書きが。このパンフ作ってるあんたらのこだわりも相当なもんだよ!


 で、こんなにもこだわり、充実した内容のパンフレットなのに、値段は900円と他のパンフレットよりちょっと値が張る程度(「王になった男」よりも安いんですよ!)。もう、文句のつけようがないです。という訳で「舟を編む」のパンフレットを作った方々、ホントに素晴らしいパンフレットありがとうございます!



 こんな感じで振り返ってきた2013年の映画パンフレットでしたが、如何だったでしょうか?2014年も素晴らしい映画と同じぐらい素晴らしいパンフレットを楽しみにしたいと思います。


 それでは皆さん、良いお年を!