俺と「ワールド・ウォーZ」

 ゾンビが出てくるけどCMではゾンビが出てこないと評判の「ワールド・ウォーZ」ですが、ゾンビと聞けば取り敢えず足を向けてしまう私はもちろん見てきました。一昨年見た「コンテイジョン」はゾンビは出てこないけどゾンビ映画の要素を強く感じた作品ですが、「ワールド・ウォーZ」の方はゾンビが出てくるのに、あんまりゾンビ映画っぽくないなぁと感じたのでした。
 ゾンビ映画じゃない映画にゾンビ映画っぽさを感じたり、逆にゾンビ映画ゾンビ映画っぽさを感じなかったりと、ゾンビ映画好きなのにゾンビについてめんどくさい私。と言う訳で、何故「ワールド・ウォーZ」が私にとってゾンビ映画っぽさを感じなかったのかを考えながら、私にとってゾンビ映画とは何なのかをちょっとまとめてみようと思います。


 まずはこのワールド・ウォーZに出てくるゾンビたちの特徴をまとめてみましょう。


1.ゾンビに噛まれたりするとウィルス感染してあっという間にキミもゾンビに!
 これは昔のゾンビ映画から面々続くお約束「ゾンビに噛まれる=ゾンビ化」がこの映画でも踏襲されてますね。特に、ゾンビになる原因がウィルス感染だとが明示されてる所は、「28日後」なんかの最近のゾンビ映画の潮流に乗ってる感じですな。映画の中で主人公であるジェリー(ブラッド・ピット)が何度か時間を計って自分や他人の感染の有無を確かめるシーンがあるんですが、あれはウィルスって言う特性を生かした緊張感のあるシーンで、カッコいいと思いましたね。


2.ゾンビはいつでも全力疾走!
 これも「28日後」や「ドーン・オブ・ザ・デッド(リメイク版)」ですっかりお馴染みなった近年のゾンビ映画の特徴ですね。昔のゾンビ映画と言えば、「足の速くない俺でも頑張って走れば何とかなるんじゃね?」的ノロノロの動きをしてたゾンビたちですが、ホント最近のゾンビたちは走る、走る、たまにすべって転ぶぐらい全力で走るんですよ。ノロノロゾンビは愛嬌があったりするけど、こいつらはガチで襲ってくる(いや、ノロノロゾンビもガチで襲ってくるけどね)ので、こっち目掛けてダッシュされてきたら、『俺の人生終ったな…』と思いますね。実際に、イスラエルでゾンビが大挙して突入してくるシーンとか、あの場に居る普通に避難してた人とかはあの光景を見ながら、「あっ、終ったな…」と思いつつも全速力でダッシュしてたんじゃなかろうか…。


3.物音とかに反応するけど、やることがなくなると大人しくなる!
 そもそもゾンビって、人に襲い掛かってくるけど何かを破壊するって言う印象ってそんなにないような気がします。例えば「ゾンビ」で描かれるショッピングモールのゾンビたちも、主人公たちが居ない状態なら、フラフラモール内を歩き回ったりしてるだけで結構大人しいよね。あと、走るゾンビでも前述の「ドーン・オブ・ザ・デッド(リメイク版)」のゾンビたちも、ショッピングモールの外に集まるだけで結構ボーっとしてるんですね(そこで射撃の的になったりしてる)。本作ではゾンビは標的がいないときは”冬眠”するっていう設定がありますが、この設定もコレまでのゾンビ映画とそんなに違ってないなと思ったりしましたね。


 アレ?意外に、というかゾンビ映画なのだからゾンビの設定はコレまでの作品と関係があって当然なのだけれども、普通にこの映画のゾンビもコレまで通りのゾンビじゃないか。じゃあ、私がゾンビ映画っぽくないなと思った部分って何なんでしょうね?


ゾンビ映画っぽさって何?
 なんかこの映画を見ながら、私の思うゾンビ映画って”よく分からない”って言うのが重要なんじゃないかなと思ったんですよ。仮にこの世界にゾンビと言う非現実の存在が登場した時点で、世界は非現実の世界になる訳ですが、例えば同じ日現実の存在である怪獣だったり宇宙人には、その怪獣を撃退(もしくは人類が滅亡する)という目的が明示されることが殆どです。でも、ゾンビ映画の目的にそんなご大層なことを掲げる映画って少ないと思う訳で、むしろ、「とにかく先の事はよく分からないけど、取り敢えず何とかしよう!」っていう意識で行動してる作品が殆どだと思うんです。この”先の見えなさ=よく分からない感じ”って言うのが、私にとってのゾンビ映画らしさなのかなと思うんですな。そう考えると、コンテイジョンマット・デイモンの「良く分からないけど、何とか家族だけ守ろう」って行動なんかが正に、あの映画における私の考えるゾンビ映画っぽさだったのかもしれんね。
 一方、この映画ってどうなのと振り返ってみると、「ゾンビの対策を見つける」っていう目的が非常にくっきりと明示されてるんです。もちろんジェリーの行動原理の根本には「世界を救うって言うご大層なことよりも、家族のために」という感情がある訳ですが、トラブルに巻き込まれつつもトントン拍子に目的に辿りついていく様子を見ると、ゾンビ映画っぽさがあんまりないように思ったのでした。



 と「俺の考えるゾンビ映画とは違う!」なんて言いがかりをつけた私ですが、この映画は結構好きです。序盤の世界終った感といい、イスラエルでのゾンビと人類の”捕まったらゾンビ・史上最大の鬼ごっこ大会”とか、後半で明かされる意外なゾンビ対策とか、見てる側を惹き付ける&関心させる要素が次々と登場して初めから終わりまで飽きずに見れたと思います。
 私にとってはゾンビ映画じゃなかったけど、面白いウィルスパニック映画だと感じる作品でしたな。